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    皮膚瘙痒症と紅斑について3 H24.4.8
 

6)バラ疹と銀屑の比較(資料「バラ疹、銀屑」は文末に添付。)
●ともに干燥した紅斑と落屑がみられる疾患であり、上記の鑑別が適応できるかどうか比較検討した。

 

バラ疹

銀屑

弁証分類

 

外風(湿)熱毒+血熱11
風湿熱毒3例、風熱+肝火1例
血虚生風+湿1例、脾虚湿熱1

血熱10、湿熱1例
血燥2例、風寒湿1例
毒熱1例、風熱1例

紅色>血燥風湿、血熱風毒湿、風熱、
紫紅色>風湿毒熱、風熱
褐色ぎみの淡紅色>風熱肝火
褐色淡紅色>血熱風毒湿
暗紅色風熱血熱+湿熱
症例8)
淡紅色>脾虚湿熱

紅色が多い>血熱、血燥、
潮紅>血熱+風湿、血熱、熱毒、
暗紅色>血熱陰耗、血熱抑鬱、血熱瘀滞、(症例12)
紫紅>血熱と湿熱
淡紅色>血虚

袪湿

17/17例
●表面は鱗屑が多く乾燥しているように見えるが袪湿している
(2例は1剤のみ)。
湿邪ありとする根拠は? 
皮膚が浸潤6-1)、
舌体が膩苔5)、6-2)、10-2)11)
その他は不明。
症例1では、膩苔もなく、皮膚浸潤もないが風湿あり、としている。皮膚より盛りあがっていることが関与していると考えられる     

18/18例
●表面は鱗屑が多く乾燥しているように見えるが袪湿している
(5例は1剤のみである。)
袪湿の理由は
浸潤皮膚3)、12-4)、15)
膩苔9),10)、
膿性分泌物2)
その他は説明なし。
銀屑じたいが斑丘疹でもりあがっているからだろう。

清気分熱または清気分湿熱

17/17が気分の熱、湿熱をとっている
清気分熱11/17
清気分湿熱14/17
●石膏知母で気分熱をとっているのは5例
3)许履和、5)李在明、7)朱仁康、8)张志礼、10)欧阳恒、

気分熱とる理由>
张志礼は「便干だったので清熱瀉火通便で石膏つかう。(便通でれば除いている)」
朱仁康は自分の著書の中で「肌膚の熱をとるため」としている。その他の説明はない。

17/18が気分の熱、湿熱をとっている
清気分熱9/17
清気分湿熱13/17
●清気分熱では(バラ疹で同様)
金銀花、連翹、白花舌蛇草、竹葉、玄参、芦根、天花粉、夏枯草、魚醒草、漏芦、石膏、知母、菊花
●石膏知母があったのは3症例5、12-1、12-2の3例のみで竹葉石膏湯として使用している。血熱風燥の代表処方に竹葉石膏湯があり、石膏いれているがその利用説明なし。
●気分の湿熱をとるのは(バラ疹も同様)
白鮮皮、地膚子、黄芩、白朮、薏苡仁、防已、桑白皮、滑石、忍冬藤、秦艽

清血分湿熱

 

8/17
2:苦参、黄連
4:竜胆草
5.苦参、木通
6-1、沢瀉、車前子
6-3.竜胆草、沢瀉
7-2:苦参
8車前子、沢瀉苦参
11黄柏、半辺蓮

 

2.4は不明
膩苔11. 6-3. 6-1、5
湿熱8
脈弦滑:7-2
苦参4、沢瀉3が多い
苦参は止痒もできるから

7/18 
3. 車前子、黄連
9、黄柏苦参
10.苦参、木通
12-1.黄柏、竹葉
12-2.黄連
13.苦参、竜胆草
14.苦参黄柏

膩苔9.10.13.
浸潤.3
脈弦数12-1.12-2
脈滑数14

車前子、竹葉、沢瀉、(甘寒)
苦参4、黄柏3が多い。黄連2、木通、竜胆草、竹葉、半辺蓮(苦寒)

袪血分湿

1/17
10-2;脾虚湿熱;茯苓皮

参考16/17は涼血清熱あり
ないのは脾虚湿熱の場合のみ

7/18
独活>温性で袪湿、
平で袪湿するのは
土茯苓が多い、烏梢蛇、地竜、萆薢、猪苓は平で袪湿

その他

①バラ疹は一般に斑疹(皮膚病中医診断学)である。(斑疹とは下記参照)。
ただ斑疹としながら袪湿を考慮していない人もいる:7)朱仁康
「南方は湿がおおいので」という理由もある。10)欧阳恒
理由不明も数人ある>许履和、黄振鸣は皮疹だけでも利湿剤使う。

①清熱涼血が多い
●血分熱をとるため生地黄、玄参、牡丹皮、赤芍、槐花、大青葉、紫草(紫根)、茅根、山慈姑が多い。
②金銀花、連翹は透邪。
③清熱解毒で白花舌蛇草と山慈姑(免疫調節機能あり)が使われている。
露蜂房:症例7は袪風止痒、攻毒消腫止痛、山慈姑は小毒)

まず「結論の前に、参考と追加あり」
参考>
「丘疹とは細胞成分の増加」であって、漿液性丘疹、苔癬型丘疹のときは湿が関与。丘疹だけでは湿の関与はいえない。ただ斑疹とは紅斑性丘疹のことで「紅斑でありながら丘疹のように盛り上がっているもの(p14)」ふつう斑とはそれ自体は盛り上がりがないが多形滲出性紅斑では盛り上がっている。組織診からでは角室増生と顆粒層減少をともなう不全角化、真皮乳頭の上方への延長して血管拡張、浮腫(乾癬型)があるので気分に湿ありと言える。
追加>バラ疹について皮膚病中医診断学では病因として「血熱があって風邪をうけてあるいは風熱をうけて発症するのが多い」としている。それゆえ弁証も「血熱で外受風熱の弁証が多い。」→パタ-ン化している傾向があり。たとえば、症例1では、脈緩、舌淡無苔で紅疹、盛り上がりありだから、気分の熱、湿邪と気血陰液不足かと思われるが血熱と風湿としている。

結論>
●<バラ疹と銀屑の比較から>
①紅斑の色について
暗紅は瘀血、陰虚でみられた。潮紅は湿熱、熱毒で、淡紅色は血虚、脾虚でみられたの一致する。「ただ湿熱は暗紅であったり潮紅であったり紅斑、脾虚湿熱で淡紅もあった。」
②袪湿がほとんどある
表面が乾燥していて、はっきり湿邪を考える根拠(皮膚浸潤、膩苔、膿性分泌物)がなくても袪湿していることが多い。おそらく皮膚から盛り上がった皮膚、斑疹があるから。→つまりこれも湿邪の根拠になる。
③清気分熱について
弁証は血熱としながら、実際には気分の熱もとる老師も多い。代表は石膏知母だが、なぜ入れるか。症例8では「便干なので生清熱瀉火通便で石膏つかう。便取れば除いた」(大腸すなわち気分の熱ありとしたのだろう)。症例7の朱仁康も石膏知母いれるが、別の教科書では皮膚の熱とるためとかいている。
これらを含めるとほとんどの例で気分の熱をとっているといえる。

★推論>
①一般に血分に熱があれば気分も熱せられて気分熱になりえる。
(それで気分熱をとることがふえる)
②血分に熱があれば気分の水飲が熱せられて気分湿熱として凝集する。皮膚は水分の貯留はおおいが主に真皮であり気分である。そこには本来水飲がおおくあるところ。気分湿熱で凝集すると、ときに盛り上がる。
③血分の熱は通常、気分の熱から伝わるものであるので血分熱あれば気分に熱が残っていても当然であろう。

「最後にSLEの紅斑について。これは毒邪が関与する」
7)蝶形紅斑(資料、蝶形紅斑)
①SLEは高熱反復、顔紅斑、出血傾向、関節痛など症状が多彩。つまり邪毒が血分に侵入して毒邪熾盛をしめす。抗基底膜抗体のある自己免疫疾患なので紅斑だけが主体ではない。
②解毒通絡として秦艽、烏梢蛇、蝉退、白花舌蛇草
(张锡君;症例1、张志礼:症例4、赵炳南;症例2)
その他の清熱解毒には重楼、露蜂房、板藍根
③養陰解毒が紅斑狼瘡の治療の重要点。(陈湘君、症例9)
青蒿、金銀花、蒲公英、白花舌蛇草、野菊花、山梔子、黄芩、連翹で清熱解毒。
(私>秦艽、烏梢蛇も養陰解毒に相当するだろう)
④血熱瘀血が本病の病理特徴だから(管竞环、症例10)
四妙勇安湯(金銀花、玄参、当帰、甘草)+白花舌蛇草を使う。
⑤毒邪が裏にはいって陰血を焼き瘀血阻滞して筋骨をむしばむから
虫類の毒(蜈蚣、全蠍)を持って毒を制する。毒には毒を持って制す(王玉玺、症例18)
白花舌蛇草、補公英、秦艽は清熱解毒するが陰と胃を損傷はしない。(艾儒棣、症例8)
⑦生地黄は副腎皮質の委縮防止、副腎皮質ホルモン合成、糖皮質ホルモン合成、ステロイドのおこす陰虚陽亢の副作用を減少させる(袁兆庄、症例6)

まとめ
1)「苔癬化、皮膚の肥厚があれば、皮膚表面が乾燥していても下に湿あり」と考えている老師が多い。皮膚搔痒症での袪風止痒には12例中、白蒺藜9、防風7、白鮮皮4が多い(地膚子3、全蠍3、苦参3、荊芥3、蝉退2、白僵蚕1、浮萍1、)

 
 
 
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