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    不眠症の弁証と治療について(その2)入眠障害と断眠について  
中医臨床、通巻146号、147号 掲載 

【緒言】西洋医学では、不眠は入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒に分類される。しかし老中医の論文では睡眠型式を論じているものは少なく1)、明確でない。そこで、自験例を入眠障害と断眠に分けて、その中医学的病機と用薬の差異について検討した。対象は、入眠障害17例と断眠の10例、入眠障害+断眠の2例について検討した。
結果1:入眠障害について(表1)
黄連1.5~2g麦門冬5~10g(以後g省略)で、入眠改善例(表1の1.2.3.6.11)が多い。夜交藤5~8竜骨10代赭石10阿膠5遠志8を加味した例(4.5.7.8.9)を含めると17例中10例あった。その治療過程で麦門冬でも有効だったのがある一方(1,6)、逆に麦門冬、百合では無理で、夜交藤、丹参の滋陰清熱が必要だったのもある(8)。他の1例は夜交藤のみで眠可(16)になり、残り6例は黄連、麦門冬が無効だった。その内訳は肝郁不眠で青皮5川楝子5で改善した1例(12)、痰濁不眠で天竺黄5遠志8陳皮3で改善した1例(14)、胃陰虚不眠で沙参5(陳皮3)が有効だった1例(15)。この3例は安神薬に無効で、弁証が合えば入眠可になった。くよくよ不眠の脾気不足が1例あり竜眼肉10が有効だった(13)。夜交藤8を加味することで有効だったもの1例(17)。黄連麦門冬に黄柏5知母5を加味して退虚熱を強くすれば有効だったのが1例(10)あった。
結果2断眠障害について(表2)
主に酸棗仁10または竜眼肉10を使用して断眠に有効であることが多い(表2の①.②.③.④.⑤.⑥.)6/10例。そのうち酸棗仁が特に有効なのは(②)。竜眼肉が有効は(③.④)。これらが無効、又は効果が少なかったのは胃気不和不眠(⑦)、肝火犯脾胃不眠(⑨)痰瘀互結(⑧)、陰虚陽亢(⑩)。⑦.⑧は安神薬なくても眠可になった。黄連、麦門冬は断眠には無効であった(⑩)
結果3:入眠障害+断眠障害について(表3)
黄連麦門冬+酸棗仁竜眼肉、さらに夜交藤、合歓皮、遠志、百合、竜骨、珍珠母、代赭石の併用で西洋薬を断薬できた。治療過程で判明したのは、夜交藤を主体にして、夜交藤8遠志8(表3のⅡ)の加味が有効だった症例があった。
【考察】入眠障害は主に麦門冬で心陰をおぎない、黄連で心火をとって治療できることが多い、17例中10例(1.2.3.4.5.6.7.8.9.11)。虚熱が強い場合は黄柏、知母、麦門冬で、または夜交藤8丹参3(8)で退虚熱を強くして改善した(9.10)。つまり病態としては心陰虚内熱が入眠障害の主体であるといえる。夜交藤単独有効が1例(16)あったことと、黄連麦門冬から黄連のぞいても眠可であったこと(1.6)を考えると心陰虚の原因もある。心陰虚主体なら、夜交藤、麦門冬がよいようだ。これらの病機は、「陰虚で虚熱があるため、熱の陽動作用で陽が陰中に入れずに不眠が起こる」と推定できる。それ以外には肝郁不眠(12)、痰濁不眠(14)、胃気不和不眠(15)、脾気虚による「くよくよ不眠(心脾両虚)」(11.13)もあるが、「くよくよ不眠」で竜眼肉使う以外は、安神薬の効果なく弁証に対応
することで眠可になっている。これらは虚熱ではないので黄連、麦門冬が無効なことが多い、(12.13.14.15)。
断眠障害では酸棗仁または竜眼肉を主体にして治療できることが多い(①.②.③.④.⑤.⑥.11)6例/断眠10例+入眠障害の1例11。これらは養心安神作用があり、主に心血をおぎなうので、病態としては心血虚が多いといえる。小麦、珍珠母が有効だった陰虚陽亢(⑩)もある。一般に陰虚火旺のように熱が強い場合、入眠不良か全不眠になるので2)3)、陰虚陽亢の場合その点が異なるようだ。これらの病機は、「虚熱が少ないため(血虚ときに陰虚陽亢)、一度陽は陰に入り入眠するが、陰血不足により陽を引き留められず、やがて陽が動き出し断眠になる」と考えられる。断眠の病機にはそれ以外には胃気不和不眠(⑦)、痰瘀互結(⑧)、半夏-夏枯草が有効だった肝火犯脾胃不眠(⑨)がある。それらは安神薬なくても治療できることが多い(⑦.⑧)。
入眠障害+断眠の場合は、上記の中薬、黄連-麦門冬、酸棗仁-竜眼肉に夜交藤、合歓皮、遠志、百合、竜骨、珍珠母、代赭石の併用で治療できた(Ⅰ.Ⅱ.)。実際には、このタイプの不眠が多く、ときに難治症例もある。紙面の都合で症例提示はないが、このほかに柏子仁、蓮子、丹参、サフラン、半夏夏枯草、磁石等の併用と運動療法で何とか対応できることが多い。
次に頻用中薬を検討した。竜眼肉は入眠障害の「くよくよ不眠」つまり思えば脾を破る症例(脾気虚やがて心血虚)に適応があり、断眠では、心血虚の場合で、竜眼肉主体で治療(③.④.11)できることも多い。酸棗仁は入眠障害の場合、8~10使用しても入眠不良が改善していない症例(5.9.10.11.12.13.14.15)が多く、入眠障害には効果がみられなかった。断眠には結果2>の如く有効である。黄連、麦門冬は入眠障害に有効であるが、断眠には不適(⑩.11.)であった。夜交藤の場合、夜交藤8遠志8の加味で入眠障害+断眠が改善(Ⅱ)でき、夜交藤8竜眼肉8で断眠(③、Ⅲ)がよくなり、夜交藤で入眠改善(8.11.16.17)できた。つまり夜交藤は入眠、断眠共に有効である。老中医で牡蠣を使用する人もいるが3)、竜骨と異なり安神薬には分類されず、検討では使用11例中、入眠改善効果なしが6例(2.4.11.12.13.17)、断眠効果なしが3例(④.⑦.⑩)、不明2例(1.⑥)であった。その他の不眠中薬は、今回の検討では、その傾向を分析するには適合症例数がすくなく検討には至らなかった。
表1入眠障害  
要点の●以下では、使用した安神薬及び相当する中薬をまとめた。治療経過中の安神薬相当は太字とした。 

1)
女性
36

主・弁

子宮筋腫:脾胃不和痰湿、瘀血、陰虚陽亢

不眠・
治療経過

入眠が毎日30分、断眠は3日/週だがすぐ寝る。半夏5黄連2麦門冬8黄芩5党参5白朮5茯苓5生地黄8玄参5夏枯草5牡蠣10莪朮5滑石8→1週後には入眠良好、断眠もない。

要点

●黄連2麦門冬8(牡蠣10)が入眠に有効●その後、黄連(生地黄も)のぞくも眠可。麦門冬の効果か。

2)
女53

主・弁・眠

突発性難聴、耳閉感:肝腎不足、陽亢、瘀血、陰血不足>入眠30分が3日/週→8日後は眠可

要点

●黄連2麦門冬8が入眠に有効●石菖根5遠志5柴胡5牡蠣10では入眠改善無し

3)女性27

主・弁・眠・経過

陰部が臭う:湿熱内蘊、脾胃不和、陰虚内熱、肝郁犯胃>入眠1h→1週後には入眠可

要点

●黄連1.5麦門冬8霊芝マツ2が入眠に有効

4)男性52

主・弁

パニック発作(急に後頭部痛、過呼吸):衝気上逆、痰濁上亢、気陰両虚

不眠

寝つき毎日1h、時に朝まで不眠。断眠無し。ワイパックス2錠、セルシン2錠4年間服用。

治療内容

党参5白朮5沢瀉8葛根8芍薬5夜交藤5生地黄8山薬8麦門冬10黄連2竜骨10牡蠣10代赭石10これで、ワイパックス0.5mg1錠に減でも、1週後入眠30分へ改善。→去夜交藤、加生地黄10↑、牡蠣15↑、桑枝8にて2日に1回、入眠1時間と悪い。去代赭石、沢瀉。加夜交藤8合歓皮8遠志8珍珠母10竜骨15↑にすると1週後に眠可

要点

●黄連2麦門冬10夜交藤5竜骨10代赭石10が入眠有効●特に夜交藤8が入眠有効。牡蠣は入眠無効。

5)女性59

主・弁不眠

郁、不眠でセパゾン、ルボックス、セレニカR。眠前マイスリー1錠、レキソタン1錠服用。
:肝腎不足、陽亢、肝気虚:入眠30分~1h、断眠3日/週ですぐ寝る

治療内容

竜骨10牡蠣10酸棗仁10西洋弟切草10黄連2麦門冬8山薬5生地黄5百合5当帰5半夏3炙甘草3小麦18で寝つき改善(マイスリーのみ服用)。その後、黄連除くと入眠悪い。心労で毎日入眠2~3h、断眠も毎日30分。そこで処方内に黄連2麦門冬10夜交藤7加味したら3日で入眠断眠改善した

要点

●黄連除くと、寝つきが悪くなる傾向。(麦門冬8酸棗仁10竜骨10百合5西洋弟切草10はある)●黄連2麦門冬10夜交藤7加味で入眠不良と断眠が3日で改善した。

6)女性64

主・弁・不眠

テニス肘:風湿熱痺証、気陰両虚>寝つき30分~2時間、断眠なし

治療内容

黄耆5桑枝8当帰3生地黄3玄参3芍薬3黄連1.5麦門冬5人参3五味子3鶏血藤3木瓜3。これで入眠が時に10分だが、大体は1~2hかかる。去黄連、玄参。加萆薢3麦門冬10+烏梢蛇末1。→入眠良好。肘痛持続で処方変更。1月後黄耆5桑枝10桂枝2忍冬藤5独活3地竜3当帰3赤芍3生地黄3牡丹皮5萆薢3水牛角5+全蠍1地鱉虫1。→肘痛が消失眠可

要点

●黄連1.5麦門冬5で入眠には有効だったが効果すくない●黄連除き麦門冬10が入眠に有効だった。

7)女性
51

主・弁

更年期、不眠、郁:脾胃不和、気陰両虚、胞宮瘀血

不眠、経過

寝つき毎日3時間が2年間:1w後には寝つき30分が主で時に2時間に減る

要点

●黄連2麦門冬10夜交藤8阿膠5黄芩5遠志8で入眠改善

8)女性71

主・弁・眠

慢性気管支炎、咳痰。:痰湿阻肺、陰虚陽亢:入眠30分ときに3時間。眠前咳なし。断眠なし

治療内容

半夏5陳皮5白芥子5蘇子5生姜2茯苓5莱菔子5百合5玄参5麦門冬10桔梗8冬瓜子8芦根5。これで咳痰へるが入眠1~2h、眠前咳痰なし。去生姜、百合、茯苓。加黄連1.5夜交藤8百部5地骨皮5。これで入眠10日良好だったが、また入眠1hに悪化。去去生姜、百合、茯苓。加夜交藤8百部5玄参10丹参3で入眠良好

要点

●百合5麦門冬10の安神剤では入眠改善なし●黄連1.5麦門冬10夜交藤8で寝つき改善するも、途中から効果減る。●黄連なしで夜交藤8丹参3が有効。

9)女性41

主・弁

体熱感、口渇:腎陰虚、気滞血瘀

不眠

月経前になるとロヒプノール1錠飲んでも入眠不良1h~時に朝まで。

治療内容

鼈甲10酸棗仁10生地黄10麦門冬8天門冬8知母5玄参5党参5西洋弟切草10黄耆10竜骨10沙参5+サフラン0.5+ロヒ1錠。これでも月経前には入眠毎日60分。→鼈甲10酸棗仁10生地黄10麦門冬8山薬5香附子5芍薬5川玉金5知母5炙甘草3黄連1.5夜交藤8+サフラン0.5+ロヒ1錠。これで経前の入眠不良は減るが1.2/週は1~2hかかる。10/27>鼈甲10酸棗仁10生地黄7麦門冬10夜交藤8黄柏7知母7牡丹皮7芍薬5丹参5党参5川玉金5+サフラン0.5+ロヒ1錠。→入眠良好

要点

●酸棗仁10麦門冬8知母5西洋弟切草10竜骨10+サフラン0.5+ロヒ1錠でも入眠不良●黄連2夜交藤8で入眠不良が減少する(麦門冬すでにあり)●黄柏7知母7↑麦門冬10↑が寝つき改善に有効

10)女性
52

主・弁

更年期、不眠、郁、つかれ:脾胃不和、気陰両虚、胞宮瘀血

不眠

寝つきが再び悪化。60-90、時に120.断眠0/日が2週続く。

治療内容

蜜炙黄耆10山薬8生地黄10芍薬8黄連2麦門冬10夜交藤8阿膠5黄芩5百合15遠志8丹参5酸棗仁10これでも上記の如く入眠徐々に悪化。去黄耆、山薬、黄芩、阿膠。加黄柏5知母5夜交藤10珍珠母10竜骨10で寝つき改善。

要点

黄連4麦門冬10阿膠5夜交藤10遠志8百合15酸棗仁10丹参5で不良の入眠が黄柏5知母8珍珠母10竜骨10加味で改善

11)女性20

主・弁・不眠

不安神経症:肝気虚、肝郁:寝つき毎日1~2時間が1月、断眠なし

治療内容

蜜炙黄耆10西洋弟切草10竜骨10牡蠣10酸棗仁8柴胡8芍薬5山薬5当帰5川芎5陳皮3でも入眠不良が1週続く→去柴胡川芎、加夜交藤8竜眼肉8で2週後には改善するも、再び入眠不良が1月続く(くよくよ多い)→竜骨10牡蠣10密炙黄耆7酸棗仁7黄連2麦門冬7西洋弟切草5当帰5人参5充蔚子5芍薬3陳皮3半夏3。これで入眠良好になったが断眠ふえる1/日、1-2h。(夜交藤、竜眼肉のぞいていた)→去黄連、西洋弟切草。加竜眼肉8遠志5酸棗仁8↑で断眠減るが入眠少し悪くなる、夢増える。2/週で2時間。不安ストレスあまりない。→去西洋弟切草。加丹参5麦門冬10で眠可持続

要点

●西洋弟切草10竜骨10牡蠣10酸棗仁8柴胡8芍薬5では入眠不良に効果なし。●夜交藤8竜眼肉8は入眠改善に有効だが持続性少ない。●夜交藤8竜眼肉8除くと、断眠がでてきた。●寝つき改善には黄連、麦門冬が良かった。●断眠ふえるが黄連、麦門冬では無効で、竜眼肉8遠志8が有効だった。●黄連のぞいて麦門冬のみでは、寝つきには弱い。1/日1hが2/wで2h。(竜眼肉8遠志5酸棗仁8はある)●夢多には丹参有効。

12)女性24

主・弁

不安、郁。パキシル10m1錠、ソラナックス2錠併用>肝気虚、気郁

不眠

夢多い、パキシル1/2錠に減らして寝付1h、夜中に急に叫ぶ2/w

治療内容

黄耆10人参5当帰5芍薬5川芎5竜骨10牡蠣10酸棗仁10黄連2麦門冬10知母5百合5これで夜中の叫び減、入眠1hと横ばい。去川芎、芍薬。加青皮5川楝子5。これで入眠可。

要点

●竜骨10牡蠣10酸棗仁10黄連2麦門冬10知母5百合5では寝つき改善できなかった。
●黄連2麦門冬10で寝つきに無効だったが青皮5川楝子5で寝つき改善(肝郁から不眠)

13)女性25

主・弁

不安、郁。ソラナックス2錠服用:肝気虚、気郁

不眠

ソラナックス1錠にして1か月たって入眠1h、思慮多い。落ち込み少し。不安時々

治療内容

黄耆10西洋弟切草10竜骨10牡蠣10黄連1.5麦門冬10酸棗仁10百合5生地黄5丹参5人参5当帰5芍薬5川芎5。これで、上記の如く入眠に1h要す。去黄耆、生地黄。加竜眼肉10炙甘草4密炙黄耆10で寝つき改善。不安、落ち込み、ほとんど無しになる

要点

●西洋弟切草10牡蠣10竜骨10黄連1.5麦門冬10酸棗仁10百合5では寝つき改善無し。
●竜眼肉10で寝つき改善(くよくよ考えるタイプ;脾気虚)。黄耆より蜜炙黄耆が有効

14)女性19

主・弁・不眠

不安神経症:痰濁不眠(夕食後菓子たべる。黄厚苔、紅点):入眠3h、その後うとうと

治療内容

8/28黄耆10黄連2麦門冬10酸棗仁10西洋弟切草10人参5茯神5阿膠5芍薬5夜交藤5五味子3+竜骨10珍珠母10.これで入眠不良。それで去五味子芍薬阿膠。加天竺黄5遠志8陳皮3で改善

要点

●黄連2麦門冬10酸棗仁10西洋弟切草10阿膠5夜交藤5五味子3竜骨10珍珠母10でも入眠不良がつづくが、痰濁不眠として天竺黄5遠志8陳皮3が良好

15)女性20

主・弁・不眠

不安神経症:土虚木乗:この2週間入眠2h。空腹感あるが不欲食。

治療内容

半夏3黄連2麦門冬10酸棗仁10人参5山薬5麦芽5青皮5香附子5夏枯草5白朮3鶏内金3縮砂3(後下)これで上記の症状がでる。それで去縮砂、夏枯草加沙参5陳皮3で眠可。

要点

●黄連2麦門冬10酸棗仁10で寝つき改善せず。胃陰虚には沙参5(陳皮3)が有効だった。

16)女性16

主・弁・不眠

立ちくらみ、つかれ:気血不足、肝腎不足:入眠毎日30~60分

治療内容

夜交藤7人参5枸杞子5杜仲5黄耆3甘草3白朮3当帰3柴胡3升麻3葛根3芍薬3+鹿角膠1。これで1週目には入眠20分に減、そのご入眠良好になる。夜交藤除くと入眠20分↑

要点

●血虚の不眠に夜交藤7で入眠良好

17)女性32

主・弁・不眠

甲状腺機能亢進症:陰虚、痰結:入眠徐々に1h、いらいらなし

治療内容

生地黄5玄参5貝母5夏枯草5淡豆鼓5山慈姑5麦門冬10竜骨10牡蠣10阿膠5黄連1.5何首烏5+鹿角膠2で眠可だが、1月後くよくよないが入眠徐々に不良1~2h。去貝母、加夜交藤8とすると入眠良好

要点

●夏枯草5麦門冬10竜骨10牡蠣10阿膠5黄連1.5あるが寝つき不良になり、夜交藤8が有効

表2、断眠障害



女性43

主・弁

びらん性胃炎、下痢:脾腎陽虚、湿濁

不眠

断眠2~3時まで、時に朝までが2/w。胃もたれは既に改善。

治療内容

人参5白朮5乾姜3甘草2補骨脂5芍薬5肉豆蒄5薤白5黄耆7炮附子3枸杞子8川芎5石決明10。この処方から去枸杞子、石決明、炮附子。加酸棗仁10竜眼肉10オトギリ5→1週後断眠1/日すぐ眠可。

要点

●酸棗仁10竜眼肉10オトギリ5が断眠に有効


女性52

主・弁・不眠

腰椎すべり症、腰痛:脾胃不和、陰陽両虚、痰湿:断眠1/日、60分

治療内容

12/19黄柏5知母5生地黄5山薬5麻子仁8酸棗仁10蜜炙黄耆5人参5沢瀉5川芎5杜仲7牛膝5+鹿角膠2。→1週後には断眠1/日だがすぐ眠可

要点

●酸棗仁10が断眠に有効●その後ストレスで酸棗仁10竜眼肉10入れても断眠2週続くが、竜眼肉10酸棗仁15で断眠無くなる。


女性56

主・弁

外陰痛が1年:湿熱下注、陰陽両虚、湿熱。大学で治療法ないと言われた

不眠・経過

寝つき好し。断眠2/日、すぐ寝れない・これで1週後には眠可になる

要点

●竜眼肉8夜交藤8が有効●その後くよくよ断眠ふえたが竜眼肉8夜交藤8酸棗仁10で眠可


女性48

主・弁

頭痛、酸水、胃もたれ:土虚木乗、衝気上逆、腎陽虚

不眠

急に思慮ふえて断眠2/日、30分が出現

治療内容

人参3烏賊骨5白朮5枸杞子5巴戟天3仙霊脾3芍薬3当帰3仏手柑3+代赭石10竜骨10牡蠣10。→去柴胡、加竜眼肉10で2週後には断眠改善

要点

●代赭石10竜骨10牡蠣10では断眠無効。●竜眼肉10が有効であった


女性69

主・弁

脊柱管狭窄症、耳鳴り:脾胃不和、心脾両虚、肝郁

不眠・経過

断眠3回/日、すぐ寝むれぬ。長いと2時間。1週後には断眠は2/日、10分で寝れる

要点

●竜眼肉8酸棗仁8竜骨10珍珠母10麦門冬5が断眠に有効


女性33

主・弁

不妊、不安神経症:脾気虚痰湿、気陰両虚、心肝両虚、胞宮瘀血

不眠・経過

断眠2/日、60分かかる・1週後にはすぐ眠可

要点

●竜眼肉8酸棗仁8竜骨10牡蠣10麦門冬8で断眠なくなる


女性36

主・弁・不眠

不眠、胃もたれ:脾胃気虚、心虚胆怯、気滞>断眠2.3/日。2/wはすぐムリ

治療内容

蜜炙黄耆2人参2白朮2乾姜2竜眼肉8夜交藤3酸棗仁5当帰3合歓皮3牡蠣5麦芽5センナ1で改善なし→蜜炙黄耆3人参3白朮3茯苓23鶏内金3麦芽5乾姜2当帰5香附子3益母草3何首烏8+縮砂2で眠可

要点

●竜眼肉8夜交藤3酸棗仁5合歓皮3牡蠣5で断眠効果なし●胃気不和として安神薬なしで眠可。


女性63

主・弁・不眠

34歳から頭痛、58歳から毎日鎮痛剤。>陰虚陽亢、腎陽虚、痰瘀互結:断眠が2/日60分

治療内容

石決明10牡蠣10生地黄5山薬8枸杞子8杜仲5半夏5芦根3蒺藜子8牛膝5白僵蚕5川芎5+釣藤鉤8+酸棗仁湯エキス3包。で断眠変化なし。頭痛は減。去芦根、釣藤鉤。加石菖根5+全蠍2水蛭1で断眠1-2/wに減る。初診から3週間でほぼ痛みなくなる

要点

●酸棗仁エキスで効果なし。●痰瘀互結の不眠>石菖根5全蠍2水蛭1が断眠にも有効


女性43

主・弁

イライラ、断眠、食欲不振:心脾両虚、肝郁化火

不眠

入眠好。この1週間、断眠4.5回/日で1回30~60分

治療内容

人間関係で急躁して、動悸して断眠。黄耆5党参3当帰5葛根5桃仁8青皮3竜眼肉10酸棗仁10遠志8芍薬5柴胡3川楝子5。これで断眠3.4/日、すぐ無理は2回/日で30~60分、すこし軽減する。2w後去黄耆、当帰。加半夏5夏枯草7青皮5↑生地黄7桃仁10。4w後にはイライラは相変わらず多いが動悸は減り断眠1、2日、30分に減。4w後には断眠なし。

要点

●竜眼肉10酸棗仁10遠志8では断眠に少し効いたくらいだったが半夏5夏枯草7が有効;これは肝火犯脾胃だろう(淡紅、黄膩苔、脈細弦稍数80/分、手心熱)


女性51

主・弁

不眠4年;ソラナックス、デパスないと不眠:気陰両虚、心腎不交。

不眠

デパス、ソラナックスやめてロヒプノールにして、その後ロヒもやめて、入眠良好、断眠2.3/日だがすぐ眠可だった。4月後不安から断眠出る4/日、30分

治療
内容

竜骨10牡蠣10酸棗仁10竜眼肉15人参5麦門冬7百合5蓮子7黄連2センナ1合歓皮5柏子仁5+サフラン0.5。この日まで、この処方で、眠剤も中止でき眠可だった。不安断眠のため去牡蠣、百合加小麦30珍珠母10ですぐ眠可

要点

●竜骨10牡蠣10酸棗仁10竜眼肉15麦門冬7百合5蓮子7黄連2センナ1合歓皮5柏子仁5+サフラン0.5あっても断眠おこったが、加小麦30珍珠母10で眠可になる

表3、入眠障害+断眠


Ⅰ)女性35

主・弁

レンドルミン0.25mgベンザリン5mgマイスリー10mgでも不眠>腎陰陽両虚。脾気虚食積

不眠

錠剤で入眠1-2h、2~5時間位は眠可。朝5時からうとうと、寝た感ない→3月後に錠剤なしで眠可。

治療
内容

10/31〈初診)人参3白朮5乾姜3麦芽8莱菔子8黄連2麦門冬8酸棗仁8夜交藤8熟地黄3百合10竜骨10珍珠母10+帰脾湯エキス。これで、寝つき1H、断眠1.2/日で、週に2回はすぐねれた。この日はいままでない寝た感がでてきた。1月後。去熟地黄、莱菔子 加竜眼肉10遠志8。これで2月後にはベンザリン(BZ系)のみで寝つき良好、断眠なし。3月後には西洋薬なしで眠可になる。

要点

黄連2麦門冬8酸棗仁8夜交藤8百合10+竜骨10珍珠母10で睡眠改善
竜眼肉10遠志8加で入眠、断眠改善

Ⅱ)
男性23

主訴
弁証

不安神経症、食欲なし悪心、パニック発作。レキソタン2錠、ルボックス(SSRI)2錠、サイレース1錠、服用中:心虚胆怯、脾陽虚、肝気犯胃、胃陰虚

不眠

入眠不良2/週で1h。断眠3/日、眠不可30~60分。→西洋薬やめて眠可、パニック発作消失。

治療
内容

人参5白朮5鶏内金5山薬8扁豆5黄連2麦門冬10酸棗仁10竜眼肉10合歓皮5代赭石8莱菔子8厚朴4。これで入眠不良は同じで、断眠1/日30~60分と断眠回数が少し減る。2w後から、レキソタン、サイレースやめて、入眠毎日60分、断眠2.3回/日に増えるが、3w後、人参5白朮5鶏内金3山薬8扁豆5黄連2麦門冬10合歓皮5竜眼肉10酸棗仁10代赭石8厚朴4莱菔子8。去莱菔子、厚朴、酸棗仁。加黄土5夜交藤8遠志8乾姜2 。これで2剤やめていても、寝つき30分、断眠1/日、2/週すぐ無理に改善。そのご蜜炙黄耆10人参5白朮5乾姜3山薬15柴胡3芍薬7酸棗仁10麦門冬8桃仁5+竜骨15珍珠母15これでルボックスもやめて1月半、入眠30分だが断眠なしになる。パニック発作消失。

要点

黄連2麦門冬10酸棗仁10竜眼肉10合歓皮5代赭石8で、入眠かわらず、断眠少し減る。
夜交藤8遠志8加味し、眠剤なしでも入眠、断眠に有効。
●酸棗仁10麦門冬8竜骨15珍珠母15で断眠なくなる (西洋薬なし)

【結語】
1)入眠障害は心陰虚内熱が主で「陰虚で虚熱があるため、熱の陽動作用で陽が陰に入れずに不眠になる。」治療は黄連、麦門冬が有効である。これらが無効なのは肝郁、痰濁、胃気不和、心脾両虚による不眠等である。2)断眠は心血虚が主で「虚熱が少ないので一度、陽は陰に入り入眠するが、陰血不足により陽を引き留められず陽が動き出して断眠になる。」治療は竜眼肉、酸棗仁が有効である。これらが無効なのは胃気不和、痰瘀互結、肝火犯脾胃で、安神薬なくても治療できることが多い。3)中薬の竜眼肉、夜交藤は入眠、断眠障害に有効だが、酸棗仁は入眠には不適で断眠には有効である。黄連-麦門冬も断眠には不適である。牡蠣は竜骨と異なり安神薬には分類されず、入眠、断眠にも有効性は確認できなかった。

 

参考文献
1)川又正之:不眠症について(その1)、中医臨床○号、p○、2016年
2)吴大真:精神神経疾病、p42~p44(贾孟龄)、科学技術文献出版社、北京市、2004年
3)吴大真:精神神経疾病、p161~p162(杨甲三)、科学技術文献出版社、北京市、2004年

 

 

 
 
 
 
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