TOP > ドクターエッセー > 第24回 
   
 
    ドクターエッセー 第24回  五行理論について(その2)  
 

前回は五角形の五行理論について書いてみました。今回は十字の五行理論について説明します。木火土金水(もっかどこんすい)の以前には、「五行は水、火、木、金、土の順に作られた」と古典にかいてあります。 宇宙の根源である気(太極ともいう)が、まず水と火にわかれ、南に心火がきて北に腎水が位置しました。風を帯びて肝木が東に位置し、肺金は西に位置します。四方の気の一部が中央で集まり脾土になりました。そうやって五行の配置がきまり、図1のようになります。これが十字の五行理論です。この中には相生の考えは出てきません。臓腑の関係において、時間、季節、方向との相関が強く表れています。たとえば、天の方向を主る霊獣に四神というのがあります。東の青龍(せいりゅう)、南の朱雀(すざく)、西の白虎(びゃっこ)・北の玄武(げんぶ)です。中央には黄龍(こうりゅう)が存在します。東は青で肝を表し、南は朱で心を表し、西は白で肺を表し、北は黒で腎を表します。中央の黄は脾に相当します。このように、十字の五行は、方向や時間、性質を表す時によく使われます。平城京の南門は朱色の朱雀門です。九州の北の海は玄界灘(玄は黒の意味です)といいます。人生の時期についていえば、青い青春時代、壮年期は朱夏、熟年は白秋、老年は玄冬といいます。
臓腑についていえば、肝は朝、春を表し、心は昼、夏を示します。肺は夕方、秋を示し、腎は夜、冬を表しています。脾は中央に位置して土用を示すとされます。土用とは四季の間にある約2週間を表します。ところで、この十字の五行をみると、心と腎、肝と肺が対称的な立場にあります。心陽は下って腎陽をあたため、腎陰はのぼって心陰をおぎない、心火が亢進すぎないように調節しあいます。こうして心と腎は相互に交通しています。これが乱れると心腎不交と言って、不眠になります。肝と肺も強調し合っています。肝は条達(上方に伸びる)を主として、肺は粛降を主るので下方への運動が主です。これが協調しあっています。これが乱れると、病気になりますが、病気の面でも季節、時間帯と関係してきます。たとえば、肝は朝に属しますが、朝方におこる片頭痛は肝と関係します。肝と腎の陰が消耗すると陽気が上昇してきます。これを肝陽上亢といいます。片頭痛はおおむね肝陽上亢によるので、抑肝散などが適応になります。腎は冬と関係します。冬になり冷えがひどくなるのは腎陽が不足していることが多いからです。また肝陰虚の為に肺の粛降が乱れ、気逆をおこし肺気上逆になります。肝は朝を主どるので、肝が弱いと明け方に肺気上逆して喘息が出るようになります。このように心腎、肝肺が互いに影響しあい、動的平衡を保っているのですが、その中央に脾があって、各臓腑を栄養して、活動の場を提供しています。このように五角形の五行理論よりは、十字の五行理論の方が、臓腑の関連を考えるとき、より参考になります。また中央に脾がくることは、あらゆる疾患において、脾胃の調節をしておくことが如何に重要かを示していると思われます。

図1、臓腑の気機升降図
 
 
 
    NEWS