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    ドクターエッセー 第8回  脾の生理についてH27年1月  
 

中医学の基本が大事であると前々回に述べたが、その基本とはどういうものか、この第8回から12回で、まず五臓の生理学について解説してみようと思う。系統講義は面白くないが、基本となるのでしばし大目にみてほしい。まず「脾」について。脾は西洋医学の脾とは異なる。脾は五臓の中で最も重要な臓器で、中焦(横隔膜より下で臍より上の部分)に有り、飲食物を消化吸収し、出生の後、精気、気血津液を化生(変化産生)し、それを全身に散布し、生命活動を推進する臓器である。消化には胃も関与し、よく脾胃(脾と胃)と総称する。

脾の生理作用には、1)「脾は運化を主る」2)「脾は血を生じ、統(とう)血(けつ)を主る」3)脾は升精を主る」の3種がある。1)の運化についていえば、運化水谷(すいこく)と運化水液がある。運化水谷とは水谷(飲食物)を消化吸収し、水谷の精微(せいび)(栄養物質)を全身に転輸(散布)する事であり、その後、心肺に輸送して気血を作っていく。一方、運化水液とは、脾胃で水液を吸収して、上焦の肺に引き上げる。それから肺の宣発粛降の力で全身に散布する。2)血を生じる場合、「脾は水谷の精微から、血を形成する主要物質を吸収し肺に上輸(上方に輸送)して、次いで心の作用も加わって血をつくる。」とされる。統血とは血管から血が漏れないよう統摂する作用をいう。3)升精とは2つの意味がある。一つは水谷の精微を上方に挙げる作用である。「脾気は上昇を主とする」とはこのことを指す。(脾は本来陰気から形成され、その作用は脾の陽気によるが、その陽気の作用を通常脾気という。)。一方、内臓が落ちないようにひきあげるのは、脾気の作用(上升作用)による。それ以外には脾は「肌肉をつかさどり、脾は口に開窮し、その華は唇である」といわれる。

古人はブラックボックスであった体内の機能、役割を五臓六腑にわりあてて、経験からその作用を演繹した。そして作り出したのが中医学である。西洋医学の解剖学、生理学とはかなり異なるところもある。西洋医学は物質を科学的に解明していくが、僕はこの学問は、実践から導き出した哲学(思索によって真理を追究する学問)だと思っている。

西洋医学では血を生成するのは骨髄である。中医では腎が骨と骨髄を主る。腎は先天の精と言って、母親から受け継ぐ。生後は後天の精である脾が水谷の精微を散布して先天の精を養っている。それゆえ、脾が血を生じるというのも検討はずれのことではない。血小板減少性紫斑病に帰脾湯(脾を補う処方)が有効であることも、これを示唆していると思う。

写真の説明>
図は「やさしい中医学入門」から引用した。関口善太氏の書籍だが、非常にわかりやすく書かれています。

 
 
 
 
 
 
 
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