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    ドクターエッセー 第6回  弁証論治、感冒  
 

「弁証論治はいかに行うか」は重要な問題である。感冒について、その分析の仕方を解説してみよう。以下は私が初学者の頃、学んだ例である。詳解中医学基礎理論から引用させてもらう。「患者:男19歳、5日前に発症、初めに悪寒発熱、頭痛、無汗、咳漱が起こる。昨日、病状に変化が起こる。所見:発熱39.5度、咳漱、黄色の痰を吐く。右胸上部に疼痛、呼吸促進、口渇し冷たいものをよく飲む。小便は黄色、舌質紅、黄苔、数脈」の症例である。

弁証の練習には八綱弁証をよく使う。表裏、寒熱、虚実、(陰陽)を弁別する方法である。まず、①表裏を弁別する:初期は悪寒発熱、無汗だったので、風寒外感の表証と推測できる。ところが5日目から但熱不寒(熱だけ見られ悪寒はない)になった。つまり裏に入ったといえる。脈は数脈だが、浮脈(一般に表証を示す)がない。つまり、すでに表証はなく、病邪が裏に入ったことを示す。②寒熱を弁別する:現在、発熱はあるが悪寒はない。痰は黄色なので、熱盛である。小便黄色も熱象。黄苔も熱象。最初は風寒表証だったので、その時は薄白苔であったろうと思われる。今、口渇し冷飲好むのは熱邪が津液を傷つけるからである。もし寒証なら口淡で口渇はない。紅舌、数脈も熱象の表現である。つまり表寒から裏に入り、化熱していることを示す。③虚実を弁別する:裏熱があるがこれが、実熱か、虚熱かが問題である。症例は正邪闘争での発熱であり高熱である(壮熱という)。これは実熱である。虚熱なら、五心煩熱、潮熱、頬紅、盗汗の症状を伴う。④陰陽について:一般に表は陽、裏は陰。寒は陰、熱は陽、虚は陰、実は陽である。この症例は八綱弁証では裏熱実陽証になる。総合的に見て陽証に属する。(この総合評価は、参考程度でよい)臓腑については肺臓である。臓腑弁証では肺熱壅盛である。立法(治療方針)は清利肺熱、止咳平喘する。方剤では麻杏甘石湯加減である。熱が高いので石膏を増量し、清熱薬として金銀花、黄?、桑葉、蒲公英、魚醒草を加えたり、痰があるので?楼根などを加えるのがよい。まあ。こういう風に考えていくわけです。

一般に外感病では八綱弁証をよく使うが、内傷雑病では臓腑弁証が主である。五臓六腑には、それぞれ中医学的生理機能が備わっている。肺では、水を調節し、宗気を宣発し、呼吸を主る。肝臓は血を蔵して疏泄を主る。脾は水穀の精微を運行する。心は神明をつかさどり、腎は骨を主る。代表的な所見のみ述べたがこの理解が重要である。次々回からは、この生理機能を解説してみることにします。次回は、閑話休題で紀行文にしてみます。(上海の旧フランス租界で記す、10月18日午後7時)


 
 
 
 
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