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    ドクターエッセー 第5回  当帰芍薬散  
 

当帰芍薬散について、ツムラ手帳では「疲労しやすく、冷え症で月経不順、月経困難症、浮腫、眩暈の人に使用する」とある。漢方を勉強された方は、これが血虚と水滞と知ろう。血虚イコール貧血ではないが、貧血症状に近い。血虚なら「面色萎黄、脈細」になる。心血虚ならその基本症状にさらに「心悸、不眠、多夢、健忘」が加わる。肝血虚なら「目渋、目干」が加わる。

水滞は浮腫もふくむが、水液(津液)の停滞をいう。この原因を考えることも大事で、それが病理である。病理を知るには生理学をしらねばならない。つまり水液のながれを漢方的にどう考えるか。脾は水穀の精微から津液を吸収して上焦にあげる。それから肺の宣発粛降作用によって、全身に散布される。下方に降りてきた水液のうち不純なものは尿ででていき、一方清なるものは、腎の蒸騰気化作用にて再び上焦へ散布する。これらの液の経路は三焦を経由する。三焦とは細胞間隙で網様体組織とされる。これが中医学の基礎理論である。初めての方には、チンプンカンプンかもしれないが。

フィギャースケートの浅田選手がスランプに陥った時、基礎からステップを練習しなおしたらしい。スケートにしろ、野球、サッカー、ゴルフにしろ基本は重要である。基本を繰り返し習得して初めて応用が利く。しかし、基本練習は単純で面白味がない。初心者が、すぐに実戦をしたがる傾向は、どの世界でもよくあることである。

先ほどの水液代謝が中医学の基礎理論(生理学)である。これに中薬学、方剤学、診断学も加えて、さらなる分析が可能になる。当帰芍薬散は、表1を見ると白朮、茯苓があるから、当帰芍薬散の浮腫は脾気虚によるものだろう。脾は気血を生化(食物から生成変化させる)するが、ここでは血虚の症状が主である。脾気虚の症状(食欲不振、便溏)は強くない。さらに沢瀉があるから水滞が強い状態と分析できる。水滞がひどくなければ沢瀉は不要である。月経不順に使う場合、血虚による月経の遅れが適応で、月経周期が短くなる気虚とか内熱には不適である。月経困難症では血虚?血によるものだから、月経中期から月経後の経痛によい。しかし、月経前の経痛に使うなら気滞に対する考慮がない。また経痛が酷い時は当帰、芍薬、川?では物足りなない。逐?湯の成分である桃仁、紅花、五霊脂、延胡索なども必要になる。中医学を学ぶとこれくらいのことは常識になってくる。ただ、残念なのは「明日から使える漢方薬」として、数時間の講習を聞いて、いきなり実戦にはいる傾向がおおいことである。基本はおろそかにしてはいけない。

 
 
 
 
 
 
 
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