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    ドクターエッセー 第4回  中医学の現状  
 

中医学は日本東洋医学会のなかでは、肩身が狭い。日本漢方が主流であるから。日本漢方は方証相対を基準とする考え方である。ツムラの手帳にかいてある「疲れやすく、冷え症で月経不順なら当帰芍薬散をつかう」という考え方である。私もこの流儀で漢方を覚えて使用した。しかし無効の時もある。その時どうすればよいのか講師に効いたら、証が違うといわれた。論理的な説明はない。日本漢方の主催する三考熟にもはいった。しかし明確な答えは得られなかった。それで、結局いろんな処方を順次使いまわす羽目になる。そんな時に中医学にであった。20年前のことである。

WHOは世界標準の漢方に中医学を採用しようとしている。日本は反対しているが、その姿勢に問題がある。厚労省は学会の力不足を批判する。金融省は漢方薬の保険外しを絶えず画数している。文句言うだけでお金は出さない。中医薬大学の教授は、次のように言う。「政府は中医学を世界展開するために、使いきれないくらいの予算をつけてくる。その分、結果を出さないといけないから辛いけどね」。台湾では中医医師が約5000人いる。(人口は3000万人)中医薬大学もあり国家試験もある。西洋医学、中医学、歯科学の順に偏差値が高いらしい。中医学一本でも経済的基盤ができている。日本では中医学、漢方のみでは、大都市を除いて、地方では経済的に成り立たない。

中国の呂先生から日本に素晴らしい漢方医がいるねといわれた。誰のことを言っているのか不明であった。丹波元堅だという。江戸時代の漢方中興の祖である。また中薬大学の教授から湯本救心という人は素晴らしいと聞かされた。大塚敬節の師匠である。日本でも本来は、中医学的考え方が存在していたのだ。

戦後くらいから方向が変化したように思う。現在の日本漢方は古方派一辺倒になってしまった。後世派に内在した中医学的考察を再建することが重要とおもう。それはどういう漢方かというと、症状を分析していくのである。たとえば急に発症した高熱、咳漱、寒気、インフルエンザ陽性だとする。これを考えてみよう。まず外感病である。この場合、外邪の種類は風、寒、暑、湿、燥、火の六邪がある。インフルになるようなものは風寒、風熱、湿温が多い。(上記の組み合わせである。)寒気でも悪寒がつよく、口渇なければ風寒である。悪風、口渇が強ければ風熱、湿温は口渇あってもひと口飲めばすみ、心下に邪が停滞しやすい。悪寒と悪風のちがいは服を羽織っても寒いのが悪寒で、改善できるのが悪風である。だからインフルエンザなら麻黄湯(風寒の薬)の直結は間違いである。

 
 
 
 
 
 
 
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