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    腰椎ヘルニア1 H26年7月27日
 

1)病態>「椎間板突出の病機」
①整形外科疾患p17
椎間板は多重の線維輪からなる。後ろ外側の線維が切れやすく、椎間板の中の髄核が突出して後面の後縦靭帯を押し上げて、椎間板が膨隆して、神経根を圧迫する。進行すれば後縦靭帯を突き破る。
②妙法解析(風湿p503)より
「腰痛、痺証の範疇に属す。肝腎虧虚が病理の基礎でそれに労損、外邪(風寒湿、風湿熱)が加わっておこる」
2)弁証
妙法解析(風湿p502)、●は「実用中医骨傷科学p527」より

 

妙法解析の風湿。
実用中医骨傷科学

妙法解析

●実用中医骨傷科学

寒湿阻滞

腰腿冷痛、痛む場所は固定(寒の凝滞による)、夜間にいたみ加重。四肢冷感、畏風悪寒、雨曇りで加重、舌質淡、苔白或いは膩、脈沈緊或いは濡緩。

烏頭湯
(烏頭、麻黄、黄耆、芍薬、甘草)

寒重なら川烏、
湿重なら蒼朮

◆独活寄生湯
(独活9牛膝6桑寄生6杜仲6防風6秦艽6人参6肉桂6細辛6茯苓6甘草6+四物湯各6)

血瘀阻絡症

腰腿疼痛、痛む場所は固定、痛みは刺痛、刀割様の痛み。痛みは夜間に加重。腰部は板硬、活動制限、口渇だが漱ぐだけでよい。舌質紫暗、瘀斑、脈渋

血府逐瘀湯
(桃仁12紅花9当帰9赤芍6川芎5生地黄9柴胡3枳穀6甘草3牛膝9桔梗5)
①痛重なら乳香、没薬
②挟痰なら白僵蚕、水蛭全蠍

身痛逐瘀湯、
順気活血湯
(蘇梗、厚朴、枳穀、砂仁、当帰尾、紅花、木香、赤芍、桃仁、蘇木、香附子)

肝腎虧虚証

腰部隠痛、酸痛。膝無力、動くと酷い、夜尿多い、不眠多夢、遺精、舌質干紅、少苔、脈細弦而弱
●病状は綿々として時軽時重、陽虚に属する場合と陰虚に属する場合がある。

◆独活寄生湯

①腰膝酸軟なら山茱萸、補骨脂
②風邪ひきやすいなら黄耆

腎気丸、右帰飲、杞菊地黄丸、左帰飲
●応用する時は活血の薬いれる。桃仁、紅花、地竜。

湿熱痺阻証

腰部疼痛、腿軟無力、痛むところは熱感あり、口苦口干、小便黄色、苔黄膩、脈弦数

蒼朮石膏知母湯
(蒼朮、石膏、知母、炙甘草、粳米)

 

3)妙法解析の老中医の症例の検討(腰椎椎間板突出)
CT、MRIで腰椎椎間板突出を確認できている症例は9人で14例あった。
妙法解析(風湿病より)1~6)から4人            4症例
妙法解析(骨傷病より)17>~23>5人、10症例 総計14症例→資料1、2
結論1     
①弁証は肝腎不足±瘀血6、瘀血3、風湿または風寒4、陰虚熱痺1に分類された(症状では痛みが多い、痺れは少)
②14例中14例は活血している。補腎は14例中13例。袪風湿は10例。
活血14>補腎13>袪風湿10。あとは弁証に応じて加減している。
③活血剤の使用は多いが。その根拠は不明が多い。

③-1)活血の根拠になる症状


2)

血塊多い、脈渋

17-2>

「瘀血の根拠は高所より落下」→外傷

18-1>①③⑤診、19-1>

腰捻挫して発症

17-1>

「舌偏紅。干燥。舌が赤いから涼血化瘀した。」

5)

「刺痛と舌暗紅」

③-2)根拠になる症状がないが活血している理由


19-2>、4)

解説なし

21>

化瘀剤いれるのは治風先治血による。

6)胡杰峰

「肝腎不足で風寒湿に合い、気血痺阻して不通即痛になった。」この表現が多い

18-2>

腰に宿傷あり、過労につづき風寒うけて経脈阻滞して絡も阻滞されて気血不暢になった。よって活血化瘀して散寒通絡する。
●急性期の患者は疼痛寛解を目標に疏風散寒、活血通絡する。とくに活血化瘀を重要視する。慢性期には病因治療を主として補肝腎、気血を補って線維の修復を図る。

22>

朱良春の説から活血を採用
「痹症日久,邪气久羁,深入筋骨,久血凝滞不行,变成痰湿淤浊,经络闭塞不通,非草木之品所能宣达,必借虫蚁搜剔窜透,方能淤去凝开,气通血和,经行络畅,深入之邪出,因滞之正复」

結論2
椎間板は多重の線維輪からなる。後ろ外側の繊維が切れやすく、椎間板の中の髄核が突出して後面の後縦靭帯を押し上げて、椎間板が膨隆して、神経根を圧迫する。進行すれば後縦靭帯を突き破る。→★「線維輪が弱くなり破れるのは腎虚。そこから髄核が飛び出してくる、本来ないものが出現するのは瘀血。外傷で発症すれ事が多いが、それは瘀血」と読める。椎間板突出は腎虚と瘀血と弁病できる。

 

4)駆瘀血に何を使うか。
肝腎不足、瘀血の症例9例中使用頻度の多い中薬は


活血では

牛膝⑥当帰⑤白芍⑤

補肝腎では

牛膝⑥生地黄⑤杜仲③狗脊③

袪風湿では

威霊仙③独活③秦艽③防風②木瓜②桑枝①

通絡

鶏血藤②地竜②地鱉虫②烏梢蛇②全蠍②桑枝①

その他

黄耆①

5)その他の老中医の解説より(腰椎椎間板突出)


2)
李昌达

腎は骨を司るのでこの種の病は補腎健骨が必要。
症状は腰痛麻木あり。脾胃を補い気血充実も重要
→黄耆60神曲30山査子30+白朮90

4)
千已百

①千氏はぎっくり腰、ヘルニア、頑固な関節痛に活絡効霊丹を使用して効果良好としている。(★瘀血の症状なし)

6)風寒湿が主の時は(4症例)
急性発症が半分2例で、麻黄、防風、附子で辛温散寒する。後は痛み減るが麻木が残ったので、袪風湿では威霊仙、秦艽、地竜が多い。それより活血の使用数が多い。→資料2

7)腎虚瘀血と風寒湿の関係。(4症例) 
腎虚があるところへ


6)

川辺で仕事→風寒を受けて発症

18-1>

重いものもって発症は瘀血である。痛み減るが脹痛麻木が残り、袪風寒湿をいれた。→虚があるところへ外邪がはいったとする

18-2>

過労で悪化→痛み減るが軽度下肢麻木のこり、袪風湿をふやす。

22>

風寒に当たり悪化した。

結論3>風寒湿を使う理由
①一般に急激発症、再発悪化のとき(虚から風湿をうける)
② 邓铁涛「風邪侵経絡で麻木起こるという、痛み痒みなし」→麻木の時に使用している。18-2,18-1,22。一般には「麻木で痛みあれば風寒湿熱。気血不足だけなら痛みない。」(鑑別診断学)→痛みのない麻木は、一般には気血不足、肝腎不足だが、邓铁涛は風邪も関与するという。

2>脊柱管狭窄症
1)病態
①整形外科p20
前方から老化変性した椎間板が後方へ膨隆し、後方からは椎間関節の節くれ立ちにより脊柱管(神経のはいっている背骨の管)が狭くなって、神経が圧迫
される。後屈位では神経の圧迫が強く、前屈で軽くなる。
②妙法解析(風湿p510)より
先天不足または後天の腎気不足から腰が充実しないのが発生の主要内因。外傷過労と風寒湿邪が侵入するのが外因である。狭窄症の病機は肝腎気虚で筋脈痺阻である。
2)症状>実用中医骨傷科学p531
①腰痛:腰下や尾骶骨に起こる、慢性の過程で持続性。または急性発作から持続性になる。特徴は痛む場所が曖昧で立位、歩行、腰を伸ばすと腰痛ははっきりする。座ると横になって寛骨を曲げると、うずくまると自転車に乗ると楽になる。咳漱の時、腰痛ははっきりしない
②腿痛:単側または両側が痛む。臀部から下肢の後面が痛む、麻木、無力などの坐骨神経痛と類似した症状がでる。
③間歇性跛行:この疾患の重要な症状である。
歩行すると神経根部の血管が充血する。内腔が狭いので圧迫を受けて静脈が瘀血になり、血液停滞して神経は虚血になり痛む。(下肢の疼痛・しびれ・冷えを感じ、一時休息することにより症状が軽減)しばらく休むと充血はとれてあるける。
④その他の症状:排尿困難、陽萎、馬尾神経症状
3)腰椎管狭窄症弁証(妙法解析、風湿p510)
弁証

 

 

妙法解析、風湿

実用中医骨傷

寒湿阻絡証

腰部疼痛が綿々、腰部負担感、活動不便、痛みは固定、畏寒喜熱、熱に会うと痛み減り。舌質淡、苔白或膩、脈沈緊或いは濡緩

独活寄生湯

湿重、白膩なら蒼朮、半夏。冷重なら細辛

独活寄生湯

寒重なら麻桂温経湯

湿熱痺阻証

腰部疼痛、腿軟無力、痛むところは熱感、口干口苦、小便短赤、舌質紅、苔黄膩、脈弦数

蒼朮散
小便短赤なら竹葉、黄連
腰膝酸軟重なら黄柏、苦参

二妙湯、
湿が重なら朮附湯

血瘀阻滞症

腰部刺痛、痛み固定、酷いと痛みで動けない、虚部に圧痛点、舌質紫暗、瘀斑、脈弦緊

血府逐瘀湯
夜間痛み酷い時は乳香、没薬、全蠍などの虫類。

活血止痛湯
定痛活血湯

肝腎虧虚証

腰部酸軟、綿々と絶えない、下肢麻木無力、労作で酷い、休むと減る、夜尿多い。小便清長、舌質淡、苔薄白、脈細弱

右帰丸

虧虚がひどいと莵茲子、枸杞子
牛膝、陰虚なら亀板

腎陽虚なら
健歩虎潜丸、
腎陰虚なら
左帰丸

活血止痛湯>当帰12川芎6乳香6蘇木5紅花5没薬6地鱉虫3三七3赤芍3陳皮5落得打6紫荊藤9   定痛活血湯>桃仁、紅花、乳香、没薬、当帰、秦艽、続断、蒲黄、五霊脂
4)妙法解析、「中医骨傷科」の老中医の症例の検討(脊柱管狭窄)→資料3
腰椎間狭窄症でX線所見あるもの
①「風湿病、腰椎間狭窄症」の症例1)~6)のうちX線所見あるのは1)张琪のみ。
(症例3は陳士鐸の症例(清の時代)で坐骨神経の症状あるが椎間狭窄症とはいえない。症例6もX線所見なし。脊椎間狭窄症の概念は1968年の米国での発表以後。)
②「骨傷病」躯幹部の筋傷症例で症例29>李同生の1例のみX線所見あり
③「中医骨傷科」の7論文
結論4
①弁証は寒湿2、瘀血3、腎虚2、風湿瘀血1、腎虚風湿瘀血1
②9文献中9例で活血している。
活血9>補腎7>袪風湿6   黄耆⑤地竜⑤(通絡)と多い。
③「中医骨傷科」の7論文は、西医的に使用してのデータなので「活血剤の使用根拠は不明である。ただそれなりの改善効果と症例数がおおいので、治療内容は参考になる。通脈活血湯と通腎活血湯は構成成分は同じである。
「基本方針は活血>補腎+袪風湿加味して熄風通絡、温経通絡をいれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3>痺証、腰痛、腰椎ヘルニア、狭窄症の相違点(まとめ1)

 

痺証
臨床中医

腰痛
臨床中医

腰椎ヘルニア
妙法解析風湿503、実用中医523

腰椎管狭窄症
妙法解析風湿510実用中医骨傷科学

病機

風寒湿、寒熱錯綜、湿熱、ひいては熱毒が(経絡)阻滞起こし、痰瘀互結になる。やがて正気を消耗し、気血不足、肝腎両虚になる。
外感が経絡侵入→臓腑の虚

外感の病位は経絡で、内傷病位は
腎肝脾。
本は腎虚で標は風寒、風熱、風湿間質、湿熱、瘀血があるが両者ともに原因になる。
外感   内傷

「肝腎気虚が発病の基礎で労損、外邪侵襲が誘因になる。」「椎間板の退行変性がありそれに外因が加わり起こる」
肝腎不足→経絡へ邪実侵入

腎気不足で、過労、外感から風寒痰湿瘀血が凝結する。そして気滞血瘀になり絡道を阻滞して腰痛がおこる
腎虚→経絡へ邪実侵入

弁証

風湿

蠲痺湯

寒湿

烏頭湯

寒熱

桂枝芍薬知母

湿熱

宣痺湯

熱毒

犀角湯

瘀血

身痛逐瘀湯+活絡効霊丹

痰濁

半夏白朮天麻+陽和湯

痰瘀

双合散

気陰両虚

生脈散+黄耆桂枝五物湯

肝腎両虚

独活寄生湯

風寒

人参敗毒散

風熱

小柴胡湯

風湿

独活寄生湯

寒湿

甘姜苓朮湯

湿熱

二妙散

脾虚

防已黄耆湯

肝郁

沈香降気散

腎虚

左帰、右帰丸

瘀血

身痛逐瘀湯

寒湿阻滞

烏頭湯

湿熱痺阻証

蒼朮石膏
知母湯

血瘀阻絡症

血府逐瘀湯

肝腎虧虚証

独活寄生湯

寒湿阻絡証

独活寄生湯

湿熱痺阻証

蒼朮散

血瘀阻滞症

血府逐瘀湯

肝腎虧虚証

右帰丸

 

結論5 
①痺証は(臨床中医内科)
「痹症是由于风,寒,湿,热之邪侵袭人体,闭阻经络,气血运行不畅,导致以肌肉,筋骨疼痛,麻木,着重,僵直,畸形,甚或关节肿大,灼热,内舍于五脏为主要临床表现的病症。」最初は風寒湿熱の邪が経絡関節に入ってくる。やがて反復発作から肝腎不足、五臓痺になる。
②老中医の診察室187より
「書痙の患者は風痰による。風が肌表にあれば発散しやすいので早く治るが、
風邪が経絡に入ると、病は長引く。経絡の風痰は、風邪が絡に入り、経気がめぐらず、津液が停滞して痰が生じる。だから臓腑との関係は深くない。治療の時には、この点を区別して考える。」
→★痺証は最初、経絡弁証。その後、臓腑に影響するので臓腑弁証だろう。

●邓铁涛「風邪が経絡に郁すると(気血阻滞して)が麻木(また抽搐)になる。
」診断学302
参考>邓铁涛曰く、「外感では風邪は肌表毛窮にいく。肌膚に行くと瘙痒、疣贅。経絡に行くと麻木、拘急、口眼歪斜。関節にはその他の邪と行き関節痛おこす。」
→経絡、関節に行くと、善行の性質はなくなるようだ。
→また酒飲むと、腠理が開いて風をうけやすくなるともいう。

4>腰椎ヘルニア、狭窄症の相違点(まとめ2)

 

腰椎椎間板突出 14例中

脊柱管狭窄 9論文中

 

15歳~65歳

50歳以上

弁証
(同じ)

寒湿阻滞、湿熱痺阻証
血瘀阻絡症、肝腎虧虚証

寒湿阻滞、湿熱痺阻証
血瘀阻絡症、肝腎虧虚証

 

活血14>補腎13>袪風湿10

活血9>補腎7>袪風湿6

活血では
活絡降霊丹+牛膝

牛膝⑨当帰⑦赤芍⑤乳香⑤没薬⑤川芎④桑寄生③牡丹皮③三七②延胡索②丹参②

紅花④赤芍⑥牛膝④当帰⑤丹参④沢欄③蘇木③

補肝腎では
(ほぼ共通)

牛膝⑨生地黄⑥杜仲④狗脊③附子或いは烏頭③白芍②続断②肉從蓉②

杜仲⑤狗脊⑤牛膝④熟地黄③鹿角③山茱萸②続断②

袪風湿では

威霊仙⑥秦艽⑤独活③防風②木瓜②桑枝①

独活②秦艽②木瓜②

参考に
通絡では

地竜⑤烏梢蛇③全蠍③鶏血藤③桑枝②烏梢蛇②夜交藤①地鱉虫②全蠍②蜈蚣①五霊脂①

地竜⑤地鱉虫①蜈蚣①五霊脂①全蠍①鶏血藤①

その他

黄耆①少ない、桑枝②
芍薬⑦桂枝①

黄耆⑤、白芍②、桑枝がない

風寒湿が主の時

  1. 急性発症に対して麻黄、防風、附子の辛温散寒、

②袪風湿剤では威霊仙、秦艽、地竜。それより活血の使用が多い。→資料

①麻黄、烏頭の使用あり。
②袪風湿は木瓜。続断、蜈蚣
活血は2味、桃仁、地鱉虫

結論6
1)威霊仙>
①本草備要より「通行十二経絡、治中風頭風、消風頑痺、十指麻木」
②朱良春、頸椎症8)王之术「威霊仙は袪風湿とともに骨棘を軟化する」

2)地竜>①朱良春より


地龙,地鳖虫
  1. 性咳喘、②頑痺、関節変形

地龙,露蜂房

  1. 性咳喘、②頑痺、関節変形

②焦樹徳より  「通絡、清熱利水するが下行するので脚気には常用する」

 
 
 
 
 
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