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    頭痛のまとめ(偏頭痛を中心に)1 H25年8月25日
 

[1]偏頭痛
A)片頭痛の分類
(1)中医症状鑑別診断学より
一側の局部の頭痛であり、古来より「偏頭痛、偏頭風、額角上痛」などの呼び名がある。偏頭痛は比較的頑固ですぐには治らない。一般の頭痛とは臨床上区別できない。
弁証は ①肝陽上亢、②瘀血犯頭、③寒飲内停
(2)臨牀中医内科学より
血管拡張性頭痛には偏頭痛と群発性頭痛がある
偏頭痛>一種の発作性の血管収縮機能異常により或いは体液成分の変化により引き起こった頭痛。女性に多く、家族性が多い。診断要点は青春期におこり周期性の発作性の片側頭痛。毎回の頭痛の性質は同じ。頭痛時、自律神経の乱れ有。
血管拡張性頭痛の弁証


肝陽上亢

天麻鉤藤飲

痰濁頭痛

半夏白朮天麻湯

瘀血頭痛

通窮活血湯

気血両虚

補中益気湯合四物湯

腎虚頭痛

大補元煎

しかし、血管拡張性頭痛は中医の頭痛の範疇に入るとしている。

(3)臨牀中医内科学より頭痛の弁証


風寒頭痛

川芎茶調散

風熱頭痛

芎芷石膏湯

肝陽頭痛

鎮肝熄風湯

痰湿頭痛

半夏白朮天麻湯

瘀血頭痛

通窮活血湯

気血虚頭痛

参考)補中益気湯合四物湯
血虚頭痛には加味四物湯(四物湯+菊花、蔓荊子、黄芩、甘草)
気虚頭痛には順気和気湯(補中益気湯+川芎、芍薬、蔓荊子、細辛)

腎虚頭痛

右帰飲

 

結論1>血管性頭痛と一般の頭痛とは、外感のぞくと弁証はほぼ同じ。

      

 

B)血管神経性頭痛の弁証
西洋医学的特徴を中医学的に弁証すれば、ある程度固有の像がみえてくる。       

西洋医学的所見(臨牀中医内科学と内科学書)

中医的解釈

突然起こる一側性頭痛で(或いは全頭に及び)発作性があり、随伴症状の悪心嘔吐が頻繁におこる

衝気上逆だろう。
陽明経の気逆と関与している。

  1. 多くは精神刺激、過労、が誘発因子

 

  1. 月経期が誘発因子。

①肝気郁結や肝腎不足(または気血不足)で起こりやすい。→衝気上逆も肝気横逆から起こりやすい。

  1. 月経期に起こりやすいのも衝気上逆の傾向。

頭痛は跳痛、脹痛、焼灼痛で拍動性。
激しいと割れる、裂ける感じの痛み。

痛みの性質からみて実証で湿邪、熱邪、瘀血の可能性ある

前兆あるときの症状は、閃輝暗点(目がちかちか、または見えにくい)がみられる

前兆は肝血不足の所見。

頭痛持続時間は2種類ある
①午前(早朝)に多く、持続は数時間から
1日、横になると減る、

 

②夜間に多い場合、持続は数十分から1時間、発作には規則性があり、寛解期が比較的長い。

①肝陽上亢が主体。朝は肝が旺盛になってくる時期。陰血不足があると旺盛になった肝陽を繋ぎ止めれず昇発する。虚もあるので横になると軽減。持続性が長いので衝気上逆の関与は少ないだろう
②肝腎不足が主体。陽亢よりも虚が多い。発作性ゆえ衝気上逆の関与が多いだろう。

頭を冷やすと痛みを忘れる 、風呂に入ると酷くなる。チーズやスナック類、ワイン、ビールなどが原因になる場合もある。

内熱が増大している

  1. 陰虚陽亢または②湿熱

(湿熱を形成する食物で悪化)

血管が拡張しただけでは頭痛はおこらず血管のまわりに脹れ(炎症)が必要。また水痘ヘルペスウイルスが原因とする説もある。
(セロトニン説と三叉神経説がある)

内熱(気分血分の熱、伏邪の熱)

同じ場所がいたむ

久病入洛で瘀血有

低血糖になると発作が起きる

清陽不升になると濁邪がさがらないで起こる

推論>血管神経性頭痛は短い発作性が主の場合、衝気上逆(腎気不摂から衝気が発作性に上逆する、陽明経絡と関与する)が関与し、比較的持続性の頭痛の場合は、肝陽上亢が関与する。後者は当然虚熱を生じるが、前者の場合でも腎気不摂から腎陰不足を誘発し内熱産生する。これらは肝気横逆から起こったり虚労から起こったりする。またそれに瘀血が関与することも多い。
→衝気上逆または肝陽上亢+虚熱±瘀血±肝気郁結
C)血管神経性頭痛、10症例  
1)資料1「血管性頭痛10症例」参照
2)結論2  血管神経性頭痛10名の弁証は
肝陽上亢3、肝陽上亢+瘀血3、心肝火旺1、痰熱瘀血肝陽1、瘀血頭風1、気虚頭痛1
 →やはり肝陽上亢が主体である。

3)血管神経性頭痛に対する老中医の特徴、意見のまとめ


2>
梁剑波

①頭は「諸陽の会、清陽の府」で、血管神経性頭痛は陰虚頭痛が多いとしている。天王补心丹加减使うが加味としてやはり平肝潜陽の石決明、鉤藤、白芍を加味している。
②当帰は動血するので除き、代わりに黄精、何首烏つかう。

10>
张晋云

①疏肝活血湯加減
当帰15香附子20川芎20丹参30紅花6沢欄15白僵蚕12水蛭10(カプセルにいれる)+炙甘草6夏枯草15鉤藤12
②この病は情志失調、気滞と関与するので肝郁、気滞、血瘀をとることを終始考える。とはいえ、治療にはやはり鉤藤、白僵蚕加味している。
③川芎は諸薬を上行させる。白僵蚕、水蛭は活血通絡して頑疾をとる。

12)
孙一民

偏頭痛の治療は
1)養血清熱、2)涼肝熄風3)浄痰袪風である。この例では涼肝熄風と活血した。
①涼肝薬物は清脳でき、熄風は神経を伸びやかにできる、活血薬は血液循環改善する
②羚羊角、石決明,桑葉、菊花、白蒺藜、夏枯草、連翹、鉤藤、白僵蚕は涼肝熄風
③赤芍、川芎、当帰、地竜、夜交藤は養血活血
④牛膝は引熱下行

董建華

六経の病はみな頭痛を起こすが、肝経疼痛が多い。平肝潜陽、清肝、養血柔肝する
①白僵蚕、全蠍、水牛角、石決明は平肝潜陽
②木賊草、菊花、鉤藤、白蒺藜(辛苦平)は清肝する
丹参、当帰、枸杞子で養血柔肝する

朱良春

この疾患の原因は多いが肝陽上亢、肝風上擾の関係が多い。
釣蠍散は40年の経験から効果は良い。
「鉤藤、全蠍、紫河車、地竜、」
朱良春の対薬より 片頭痛には①全蠍3鉤藤3紫河車3、②全蠍3蜈蚣3マツ、③全蠍、附子などもある。

施今墨

最初の処方で効果少なく、
紫石英15川芎5白僵蚕5苦丁茶3蔓荊子5充蔚子6菊花6天麻5鉤藤6何首烏6白蒺藜15桑葉6当帰10生地黄10白芍10
次に
石決明30草決明10地竜6蝉退5明玳瑁10の加味が効果あった。
①充蔚子、四物湯で活血する、
②天麻、鉤藤、石決明は平肝熄風する。
③地竜、白僵蚕は熄風通絡する。
④桑葉、菊花、連翹、蔓荊子は清利頭目

孟澍江

血管性頭痛の弁証は肝陽上亢と痰熱内阻、血絡不和、寒邪外客、気血不足が関与する。
「頭痛舒煎」自作(痰熱、瘀血の処方)
炙全蠍4石膏20細辛4石決明15白僵蚕10白附子6紅花6天麻8
①石膏、白附子で清化痰熱する。  ②石決明、天麻で潜陽
③全蠍、白僵蚕で捜風鎮痙、    ④紅花で活血通絡、
⑤細辛は上部を走窜して止痛。

金实

活血定痛湯(自作)>血管神経性頭痛、片頭痛、群集性頭胃痛、高血圧性頭痛にも適応できる、
川芎10~15白芷10蔓荊子12沢欄10~15当帰10~15穿山甲10~15防風12天麻10黄芩10
①「瘀血頭風は病が永く癒えず、痛点が固定限局している」なら瘀血頭痛である。
②症状としては刺痛であり、または鈍痛で割れそうな痛み、である
③川芎は君薬、当帰は川芎の辛温消散の弊害を防ぐ。久痛入洛になると草木では効果弱い、虫類で捜剔する>穿山甲

  1. 頂には風だから行ける、それで防風、白芷、蔓荊子使う。

⑤瘀血頭痛でも上行の薬がないと効果ない。
「頭風は頭痛の激しく反復繰り返し、長く治らない者をいう。」

唐培位

血管性頭痛は四君子湯+黄耆で治す
黄耆30党参15白朮15茯苓15川芎15莵茲子15黄精15柴胡15陳皮15生甘草6
①老師は脾腎から入手する。
②川芎は頭痛の用薬だが癒えないときは引経薬を用いる。柴胡は引薬で上行させる。黄精は潤肺滋陰できるこの処方は、血管拡張性頭痛に良い。血管収縮性頭痛には効果悪い。
●「脳波で散発性Q波があり、これは脳血管拡張を示す」とする。偏頭痛に特徴的な症状はない。

★多いのは、潜陽、活血、清熱。+疏肝
4)結論3>老中医10名の症例、コメントから、B)で想定した血管神経性頭痛は
妥当性があるだろう。
衝気上逆または肝陽上亢+虚熱±瘀血±肝気郁結
5)血管神経性頭痛で肝陽上亢傾向のあるもの(何を使っているか?)
資料1参照
まとめ
●石決明⑤紫石英②鉤藤⑤白僵蚕⑤天麻③全蠍③白疾痢③地竜③
生地黄③玄参②赤芍②白芍③枸杞子②夏枯草②菊花③
丹参③当帰③川芎③紅花②桑葉②

●平肝熄風(石決明⑤紫石英②鉤藤⑤白僵蚕⑤天麻③全蠍③白疾痢③地竜③)
清熱滋陰(生地黄③玄参②赤芍②白芍③枸杞子②夏枯草②菊花③)
活血  (丹参③当帰③川芎③紅花②)が主である。
「桑葉はなぜある?」
参考1)石決明にくらべて天麻ややすくない。→施今墨の症例参照。
参考2)紫石英:甘辛温>心肝肺腎>鎮心定驚、温肺降逆、散寒暖宮
(肝血補い心身不安を治し怯を去る。)

[2]ここからは一般の頭痛
症例分析
妙法解析(神経科、偏頭痛) 11名の26症例と現代名中医11名19症例、計45症例の処方内容を検討とした。
(1)肝陽上亢の頭痛(資料2)
1>●妙法解析10名の18症例+現代中医4例から使用頻度は

石決明⑪菊花⑪鉤藤⑧白蒺藜⑧酸棗仁⑥生地黄⑧山茱萸⑤白芍⑬当帰⑥川芎⑥半夏⑤竹茹⑤白僵蚕⑤代赭石⑤旋覆花⑤牛膝⑤牡丹皮⑤茯苓⑤夜交藤④夏枯草④白芷④牡蠣④桑葉④天麻③茯神③磁石③熟地黄②党参②麦門冬②連翹③黒芝麻②黒豆衣③延胡索③枸杞子③藿香②女貞子②遠志③柏子仁②丹参②陳皮②橘紅②黄芩②赤芍②玄参③羚羊角②
肝陽上亢の頭痛といえば天麻鉤藤飲、または鎮肝熄風湯である。前者では天麻、後者では竜骨も重要とおもわれるが使用頻度は少ない。また両者にない菊花、白蒺藜が多い、なぜか?   桑葉はなぜ?
参考1>


天麻鉤藤飲

天麻9釣藤鈎12石決明18黄芩9山梔子9夜交藤9茯神9杜仲9午膝12桑寄生9益母草9

鎮肝熄風湯

牛膝30竜骨15牡蠣15代赭石30芍薬15天門冬15玄参15亀板15茵陳蒿6川楝子6麦芽6甘草4.5

 

参考2>


天麻

「血虚の者、とくに類中風には禁忌」風薬は燥血するから。使用するときは養血剤を併用すること>本草備用p46  (★ただし、一般に眩暈の時は良く使用されてる。)

天麻は肝胆の内風を抑えるが、血虚の者は助火して風は酷くなる、補血の薬がいる。>得配本草

袪風化痰薬は燥性が多いが天麻だけは辛潤不燥で頭痛、眩暈に使用する>焦樹徳、用薬心得

石決明

骨蒸労熱によい、久服益精とあるから、腎陰虚にもよいようだ
>本草備用

陰水を生じて、陽光を制する。肝肺の風熱を清し、内障を治し、骨蒸を除き、五淋を通す。枸杞子や菊花とで頭痛目暗を治す。>得配本草

養肝陰、清肝熱して潜陽の力は強い。珍珠母より潜陽はつよい。珍珠母は安神が強い。石決明は肝経に入り潜陽し、牡蠣は腎経にはいって収斂し潜陽する(石決明、牡蠣は対薬でよいようだ)>焦樹徳、用薬心得

菊花

平肝熄風でき、肝陽上亢頭痛によい>中薬学

白蒺藜

肝陽上亢の頭痛、眩暈によい。平肝疏肝、袪風明目>中薬学

鉤藤

肝経有熱で頭脹、頭痛によい>中薬学

桑葉

「外感風熱頭痛」が主であるが目赤腫痛、頭痛にも有効(中薬辞典)

 
 
 
 
 
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