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    気管支拡張症の治療(とくに痰熱壅肺の治療はどうするか)1 H24年12月9日
 

A)症例1、2からいえること
痰熱咳漱、痰濁壅肺の拡張症の治療にて「通常の清熱化痰止咳では有効性が少なかった」ならばどうすればよいのか?改善した後、何に注意して治療していくのか?
B)呼吸器疾患の概括     中医学的分類(実用中医内科より)

 

中医

西洋医学分類

治療原則

弁証分類

咳漱

上気道感染、
慢性気管炎、
肺炎、
気管支拡張症

中医でいう「咳漱」には左の疾患が含まれる。外感咳漱、内傷咳漱に通常通り弁証して治療。

①風寒
②風熱
③温燥
④涼燥

⑤火熱⑥痰湿
(二陳湯合三子養親湯)
⑦痰熱
(清金化痰湯)

⑧肝火
⑨陰虚
⑩気虚
⑪陽虚

喘証

喘息

①平喘
②予防と原因疾患治療

①風寒束肺 
②外寒内飲
③痰湿壅肺
④風熱壅肺
⑤燥熱傷肺

⑥痰熱壅肺
(麻杏甘石湯)
⑦外寒里熱
⑧肺気郁閉

⑨肺脾両虚
⑩腎陽虚
⑪腎陰不足

肺脹

肺気腫、呼吸衰弱、慢性肺性心、老人性肺気腫

①清瀉肺熱を始終一貫する
②化瘀利水に注目する
③時いたらば扶正固本

①寒飲射肺
②痰熱壅肺清気化痰丸

③肺腎両虚
④脾腎陽虚
⑤寒痰内閉

⑥熱痰内閉
(喉棗散)(至宝丹)

肺労

肺結核

①殺虫、補虚 
②主症状に対処する喀血、不眠などに注意する
③燥烈、苦寒、升散は気陰消耗するので避ける

①陰虚肺熱
②肺腎陰虚
③気陰虧耗
④陰陽両虚

 

肺癰

肺膿癰、
肺化膿症、
肺壊疽、
気管支拡張症合感染、>実熱

①清熱解毒、化瘀排膿を基本原則とする
②段階に応じて加療。初期は疏散風熱、宣肺化痰するが、後期は気陰両虚をおぎなう。

①初期、風熱襲肺
②成癰期>瘀熱内結
③潰膿期>葦茎湯加桔梗湯

肺痿

肺線維症、塵肺、
肺硬化、慢性気管支炎>虚熱

①弁証によるが原則は養陰、清熱、補気、温陽、寒熱平調

①虚熱
②虚寒
③寒熱夾雑

鼻渊

蓄膿症、鼻炎

①疏風、清熱、除湿の袪邪を主にするが久病正虚になるが気虚が多く次いで陰虚、陽虚である。②邪風熱が多いが、解毒排膿を併用する。

①熱壅肺
(蒼耳子散+金銀花、
連翹、黄芩、菊花)
②胆火上干

③脾経湿熱
④肺気虚寒
⑤脾気虚弱
⑥髄海不充

治療原則について補足
①平喘
実喘>麻黄、細辛、乾姜、地竜、厚朴
虚喘>磁石、五味子、冬虫夏草、蛤蚧、補骨子、沈香、代赭石、銀杏、胡桃肉、山薬
②殺虫
回虫>烏梅、トリコモナス>仙鶴草、たむし>露蜂房、シラミ>百部
結核>百部、葎草、嵐松)
③排膿剤

冬瓜子

甘寒、肺大腸

清肺化痰、消癰排膿、利湿

薏苡仁

甘淡微寒、脾胃肺

利水滲湿、健脾、除痺、清熱排膿

白芷

辛温、肺胃       

解表、袪風燥湿、消腫排膿、止痛         

栝楼根

苦微甘寒、肺胃

清熱瀉火生津,消腫排膿

魚醒草

辛微寒、肺

清熱解毒、排膿、利尿

敗醤草

辛苦微寒、胃大腸肝

清熱解毒、消癰排膿、袪瘀止痛

桔梗

苦辛平、肺

開宣肺気、袪痰、排膿 

黄耆

甘微温、脾肺

補気昇陽,益気固表、托毒生肌、利水消腫

赤小豆

甘酸平、心小腸

利水消腫、解毒排膿

白及

苦甘渋、微寒

収斂止血、消腫生肌、排膿

紅藤

苦平。大腸

清熱解毒、活血止痛、消癰止痛

穿山甲

鹹微寒、肝胃

活血通経、催乳,消腫排膿

 

 

 

体表癰瘍で陽証

仙方活命飲

体表実熱陽証

 

牛蒡解肌湯

風熱が上部を侵襲して癰瘍

 

五味消毒飲

 

 

四妙勇安湯

下部脱疽

 

丹梔逍遥散、黄連解毒湯

体中部の癰瘍は気郁火毒による

 

犀黄丸

瘰癧,肺癰、腸癰、乳癌

 

海藻玉壺湯

石瘿

体表癰瘍で陰証

透膿散

邪毒蘊結して表面に出てこない者

 

托里透膿散

同上

 

内補黄耆湯

同上

 

陽和湯

虚寒陰証           

 

小金丹

虚寒陰証           

臓腑癰瘍

葦茎湯

肺癰>痰熱瘀血

 

大黄牡丹皮湯

腸湿熱

 

薏苡附子敗醤散

腸湿熱

④排膿剤ではないが消癰散結の効果のある中薬としては

金銀花、連翹、夏枯草、玄参、白花蛇舌草、蒲公英、紫花地丁、
遠志、巴豆、蚤休、芦根、桃仁がある。

 C)弁証は痰濁壅肺であるが、肺癰の考えから癰瘍剤を選択した。

●肺癰の定義>実用中医より
発熱(微熱)、咳漱、胸痛(隠痛)、咳痰量多、腥臭、酷いと膿血を吐く。 

D)癰瘍剤のまとめ
葦茎湯(葦茎(芦根)30薏苡仁30桃仁9冬瓜子24)

E)気管支拡張症の治療4原則(22>林琳老中医)
①痰熱から着手:標である痰熱をとる、
早期>葦茎湯加桑白皮または礞石滾痰丸(酒大黄、礞石、黄芩、貝母、全栝楼)

②肝火、すなわち陰虚相火をとる
黛蛤散(青黛、海蛤穀、白芍、柴胡、黄芩)を使う

③瘀熱、燥熱を考量する
生地黄、牡丹皮、仙鶴草で清熱涼血する。玄参、桑葉、絲瓜絡は経絡の熱をとる。

④後期は気陰を考量する。
標本兼顧して清熱化痰、滋陰潤肺する。北黄耆生脈散加薏苡仁、敗醤草。  
陰虚がひどいと百合固金湯。気陰両虚なら北黄耆生脈散加百合固金湯加貝母、魚醒草、海蛤穀。黄耆は後期には欠かせない中薬

 

F)各老中医の特徴
1)痰熱壅肺があるときの治療は何を選択するか
①葦茎湯加減で有効例多い。症例13.17.26.27.41.22. 9.39
葦茎湯での無効例:22.41
②麻黄剤(麻黄杏仁±石膏);症例3-1、3-2、12-2、
③連朴飲+大柴胡湯加減1-1     
④三聖散16 (生大黄、白及、参三七) 
⑤止嗽散+旋覆代赭湯+三子養親湯、21-2、21-4
⑥三紫湯2(紫草、紫花地丁、紫苑)をつかう
2)痰熱が取れた後、痰飲とるには温陽宣通する:3-1、11
3)肝火にたいして
①「肝病は体陰用陽なので、せめてはならない。白芍が良い。」本治の要薬である>38
黛蛤散(肝火犯肺)±葦茎湯15、39、9 、22
③柴胡、平地木、白芍、牡丹皮、夏枯草、野菊花+蒲黄、茜草、藕節、1-2)
④犀角地黄湯6,7、旋覆代赭湯31
4)陰虚にたいして
百合固金湯5,18,40,47、6  生脈散20,22,32  清燥救肺湯40
「この疾患は陰虚が本である」4
5)排膿剤使用が多いがないものもある
6)痰熱+陰虚をどうするか→ 甘淡養陰13が良い。
7)後半に黄耆を使うか否か
黄耆よくない10       黄耆必要22
8)伏火24、伏痰12
9)麻黄について
10)その他 
①肺組織の損傷者には鵞管石+花蕊石使う21-1
鵞管石(方解石)>温肺、壮陽、通乳、   花蕊石(大理石)>止血、活血化瘀
②「感染が反復しておこるので清熱解毒、化痰化瘀は全治療経過を通じて必要である。」魚醒草、野蕎麦根、白花舌蛇草。これらは抗菌消炎作用あり4

G)上記Fの解説と問題点
G-1>なぜ葦茎湯を選択したのか。(肺癰の定義にあてはまるか?)

 

症例

選択理由の推定

13

胸悶心悸、咳痰黄緑量多。鮮血を吐く、痰中に帯血。
痰熱が久蘊しているので傷陰している。苦寒の薬は良くない。それで
薏苡仁、栝楼皮、竹茹、枇杷葉、冬瓜子、葶藶子を使う。

17

診断が気管支拡張合併感染。
発熱、黄痰、痰中に帯血。胸悶、胸中隠隠痛、

26-1

咳漱頻回、黄粘痰、膿痰多い、胸痛隠隠、湿性ラ音、CTで拡張症あり。痰中に血あり。

9

腥臭い痰、膿血様の痰、量多い。

27

喀血で鮮紅色は痰熱内蘊に属し、湿性ラ音あり、しかし、胸悶はない、

39

喀血して胸肋痛あり。黄粘痰吐く。

 

22
林琳

弁証>肺脾両虚、痰熱壅肺、瘀熱入絡。
拡張症、肺気腫で咳漱、黄痰が続くので肺部分切除して改善した。その後風邪ひいてから、触発され黄膿痰で入院。西医は抗生物質、中医は清熱化痰した:瀉白散+葦茎湯加減したが効果悪い。仙方活命飲+托裏消毒飲ですこし改善して、退院したがすぐに風邪ひいて再発。今の症状は咳、濃痰吐く、口干、口不苦、舌質淡、白苔、脈細弦」 

北耆生脈散(自作)
北黄耆20党参15麦門冬15五味子6田七3敗醤草20貝母15海蛤穀15桔梗10当帰9百合15玄参15白及3
●気陰を補いつつも、結局は排膿剤をいれてあるようだ。

 

高荣林17  

弁証> 外感寒邪、内蘊痰熱、灼傷肺絡
「18男、発熱して黄痰多い、朝夕に多い、帯血して喀血、検査で気管支拡張症。喀血は20~150ml、咳漱は重い、声は重く濁り、胸悶、胸中隠痛、心煩、失眠、咽痛、口渇、低熱、便干、小便黄、舌紅、黄膩苔、脈弦数、37.2~37.8

葦茎湯加減
芦根30桃仁9薏苡仁15冬瓜子15桑白皮15茅根30杏仁9側柏葉20炒山梔子10生地黄10花蕊石20牛膝10熟軍3田七2
しかし発熱つづき悪寒もでたので
銀翹散加葦茎湯加減→小柴胡湯加葦茎湯加減に変更して改善。咳痰消失してから
③補中益気湯加減
黄耆15白朮10当帰10陳皮10党参10牛蒡子10白僵蚕10玄参20酸棗仁15貝母10柴胡10甘草6
●邪が去った後、虚が残り、補中益気湯使用。

裴学义41

弁証>熱邪久蓄肺絡不解、迫血妄行
「頻回咳漱、膿痰迫、この10日喀血。夜間寝汗、37度、黄色の顔色、時に自汗、手涼、苔薄白、舌質微紅、脈弦細。」

①白茅根30貝母6血余炭9側柏葉9蒲黄炭9竹茹6桃仁6冬瓜子9枇杷葉9杏仁6
しかし、これでは喀血減らず。そこで脈弦細数から木火刑金として平肝潜陽涼血としたら効果あり。
②牡蠣30貝母9竹茹24代赭石30藕節15生地黄15山梔子炭9側柏葉炭9牛膝9茅根60  (藕節は収斂止血、化瘀)

●ほとんどの症例で、肺癰の症状あり。(症例22は?)

G-2)葦茎湯で効果不良の症例はどう対処しているか  □は排膿剤

G-3)痰熱壅肺で葦茎湯以外にどのような処方をしているか

症例、3-1

 

3-2

 

12-2

麻黄剤
肺脾気虚、痰熱壅肺、瘀滞阻絡

 

2)気陽虚弱、痰熱郁肺、瘀阻肺絡

 

2)痰濁恋肺、咳喘

 

①麻黄10杏仁10石膏30甘草10桑白皮15地骨皮30金蕎麦根30敗醤草15黄芩10白芷30合歓皮30桔梗30三七マツ6大黄6
→3診より麻黄なし
(金蕎麦根>清熱解毒、活血消風、袪風除湿)
麻黄10杏仁10黄芩10生甘草10金蕎麦根30夏枯草20貝母15桔梗30海蛤穀20生黄耆30白朮15栝楼殻15郁金15
(記載は5診目まで)
2)麻黄9杏仁9甘草6紫苑15百部15蘇子9白前12蒼耳子9地竜6
(記載は2診まで)

1-1

痰熱壅肺、肝気失疏(肺瘍)
連朴飲+大柴胡湯加減

1)①鹿銜草18柴胡9黄芩18白芍18赤芍18半夏9茅根30芦根30大黄9半辺蓮30野蕎麦根30前胡9桃仁9仏耳草12陳皮9川楝子9郁金9咳は減ったが黄痰はまだ多いので
②加魚醒草12蒲公英12六月雪15蚤休9敗醤草9
これで痰減る

16 

痰熱壅肺、肝火熾盛、火盛気逆、灼傷肺絡,血熱妄行

三聖散(生大黄、白及、参三七)
黄連解毒湯

1)生地黄30牡丹皮10黄芩10黄連6山梔子10白茅根30金銀花15+大黄3田七3白及6

 

21-2、

 

21-4

痰熱互結
旋覆代赭湯+三子養親湯
+止嗽散

肺熱痰濁
旋覆代赭湯+止嗽散

前胡5橘絡5橘紅5紫苑5白前5蘇子5冬瓜子18白芥子1.5旋覆花6代赭石12莱菔子5半夏6款冬花5枇杷葉6桔梗5犀黄丸6

4)百部5紫苑5白前5旋覆花6代赭石15化紅5杏仁6茯苓10黄芩6款冬花5桔梗5遠志6白茅根20赤芍6白芍6甘草3

2

三紫湯(紫草、紫花地丁、紫苑)をつかう
気陰両虚、風熱内擾

半枝蓮30白花舌蛇草30蒲公英30紫花地丁30紫草30知母10黄柏10蜈蚣3全蠍3秦艽15柴胡10銀柴胡15青蒿15竹葉15芦根30甘草10

 
 
 
 
 
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